
色の見分けが付きにくいと感じるときは、色覚異常かもしれません。色覚異常は多くの場合、遺伝によって発症しますが、加齢によって進行する場合もあります。
色覚異常には複数の種類があり、それぞれ特定の色の見え方をします。性別や色覚異常の種類によって症状の共通する割合も異なります。種類を理解する前に、色覚異常の仕組みを知ることが重要です。
色覚異常の仕組み
人間の目の網膜内には桿体細胞と錐体細胞の2つの光受容体があり、これらが光の波長から受け取った情報を脳に伝えることで色を認識します。
- 桿体(かんたい)細胞:暗いところで光の明暗を感知する細胞
- 錐体(すいたい)細胞:明るいところで光の色(赤・緑・青)を感知する細胞
錐体細胞には赤・緑・青の光感受性色素があり、それぞれ特定の光の波長に反応します。正常色覚の人は、赤・緑・青に反応する錐体が光の波長を感知して、色を見分けます。
しかし色覚異常の場合、錐体の一部が機能しないため、色の情報が脳に正しく伝わりません。その結果、その錐体に関する色を判別できなくなります。
色覚異常の種類
色覚異常には、1色覚・2色覚・異常3色覚の3種類があります。2色覚と異常3色覚はそれぞれ赤・緑・青を感知する錐体細胞の機能不全によって、プロタン(1型)・デュータン(2型)・トリタン(3型)に分けられます。
▼色覚異常の種類
色覚異常の種類 | 分類・感知しない色 |
1色覚 | ー |
2色覚 | プロタン(1型)2色覚:赤デュータン(2型)2色覚:緑トリタン(3型)2色覚:青 |
異常3色覚 | プロタン(1型)3色覚:赤デュータン(2型)3色覚:緑トリタン(3型)3色覚:青 |
1色覚
錐体がまったくない、または1種類の錐体しか機能していない状態で、モノクロの世界に見えています。
2色覚
2種類の錐体細胞しか機能しておらず、欠損した錐体細胞が感知する色を認識しません。
プロタン(1型)2色覚の人は赤、デュータン(2型)2色覚の人は緑、トリタン(3型)2色覚の人は青を認識できません。プロタン(1型)2色覚とデュータン(2型)2色覚は錐体細胞が重なり合っていることが多く、赤と緑の両方の色覚が失われています。
2色覚の人の視界は「鮮やかな青・黄色」および「よく似た茶色・オレンジ・赤・緑」です。ただし、プロタン(1型)2色覚とデュータン(2型)2色覚の錐体がそれぞれ単独で機能した場合、プロタン(1型)2色覚の人は緑、デュータン(2型)2色覚の人は赤を感知します。
2色覚の人は色覚異常の種類によって、次の色を混同しやすくなります。
▼色覚異常の種類と混同しやすい色の組み合わせ
色覚異常の種類 | 特徴 | 混同しやすい色の組み合わせ |
プロタン(1型)2色覚 | 赤を感知する錐体が欠損または機能しない赤色が見えにくい | 赤と黒赤とオレンジ暗い茶色と暗い緑一部の青と赤一部の青と紫一部の青と濃いピンク |
デュータン(2型)2色覚 | 緑を感知する錐体が欠損または機能しない緑色が見えにくい | 赤と緑赤と茶色黄緑と黄色淡いピンクと薄い灰色 |
トリタン(3型)2色覚 | 青を感知する錐体が欠損または機能しない青色と黄色が見えにくい | 青と黄色青と緑赤とオレンジ水色と灰色濃い紫と黒 |
異常3色覚
異常3色覚は、赤・緑・青の錐体細胞がすべて存在していますが、うち1つの錐体が部分的に機能していません。もっとも一般的な色覚異常で、色覚が完全に失われるのではなく、色の区別が困難な状態です。それぞれの症状は以下のとおりです。
▼異常3色覚の種類と特徴
色覚異常の種類 | 錐体の症状 | 色の見え方 |
プロタン(1型)3色覚 | 赤錐体の部分的機能不全 | 赤・オレンジ・黄色・黄緑色の彩度が低下する |
デュータン(2型)3色覚 | 緑錐体の部分的機能不全 | 緑・茶色・オレンジ・赤の区別が困難 |
異常3色覚はトリタン(3型)2色覚と同様に、しばしば青と黄色の区別が難しくなります。完全に色覚を失うのではなく、あくまで色の鮮やかさが変化します。
各種類の共通点
遺伝による色覚異常の発生率は、どの色覚異常の種類にも共通して女性より男性のほうが高くなっています。これは色覚に関係する遺伝子がX染色体上にあるためです。
性別を決める染色体にはX染色体とY染色体があり、男性はXとYを1つずつ、女性はXを2つ持っています。女性が色覚異常を発症するのは両方のX染色体が変異したときですが、男性の場合はX染色体が1つ変異すると発症します。このため、男性のほうが女性よりも色覚異常になる可能性が高くなるのです。
さらに色覚異常には、次のような共通点もあります。
- 1色覚は3つの錐体すべての欠損によって起こり、もっとも珍しい色覚異常である
- 2色覚と異常3色覚は類似していて、3つの分類(プロタン・デュータン・トリタン)のうちプロタン(1型)とデュータン(2型)の人が多い
- トリタン(3型)の人は非常に少ない
色覚異常の多くは遺伝によるものですが、慢性疾患や事故、ストレス、薬剤などが後天的に色覚異常を引き起こす場合もあります。
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